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The Last of Us (XgEIuEAX)

レビュー

THE LAST OF US の総評

[PS3] The Last of Us (ラスト・オブ・アス)
The Last of Us (ラスト・オブ・アス)

1人専用のTPS視点のアクションゲームです。舞台は人の脳を操る寄生菌の感染により人類が衰退していっている20年後の世界で、一部の隔離地域を軍が統治しているだけの無政府状態の荒涼とした世界です。

アクションの内容は、弓矢、ハンドガン、ライフル、火炎瓶などのアイテムを使って敵を倒す、素手やナイフでの近接戦闘、障害物などに身を隠してやり過ごしたり背後から襲い掛かって倒すステルス行動があり、概ねこの手のゲームにありがちなものが揃っています。もちろん、差をつけるような所ではないベーシックな部分なので、これはプラスでもマイナスでもありません。

派手に撃ち合って進めていくタイプのゲームではなく、古き良きメタルギアソリッドのように身を潜めながら戦わずに進めていくことに面白みをみいだすゲームです。いうなれば「ステルス・サバイバル・アクションゲーム」といったところです。

ゲームの難易度は初級、中級、上級、サバイバルとあり、それぞれ更にちょっと難しくなった初級+、中級+、上級+、サバイバル+もある上、ゲーム途中で難易度変更が可能なため、どうしてもクリアできない場面があればその場でメニューを開いて難易度を落として遊ぶことができます。

中級がおそらくノーマルの難易度だと思いますが、このゲームは難易度サバイバルでこそゲームとして成立する仕様になっています。

ステルス行動を基本とするアクションのため、武器弾薬が少ないので節約して進めていきますが、中級だと物語が進むにつれ武器弾薬が余ってくるので盛大にドンパチしてゴリ押しでクリアできてしまいます。するとゲームとしては腰砕けというか、少々物足りない感じがして終わってしまいます。

サバイバルになると敵も増えて強くなり、行動パターンも変わり(プレイヤーにステルスをさせにくい行動をとる)、弾薬は足りない、壁の向こうにいる敵の動きを察知できる「聞き耳」が使えない、となるので、その場にある物を活用して状況を打開するという、本当の意味でサバイバルゲームになり非常に面白いです。いわゆるバカ設計な「鬼畜無理ゲー」とは違いちゃんと考えられた難しさなので必ず打開方法が用意されており、それを見つけて攻略していくところが面白さに繋がっています。

このゲームで特に素晴らしいところは、ストーリー進行とアクションゲームの融合の仕方です。大方のゲームでは、長いアクションステージがあり、それが終わるとムービーが入ってそこでストーリーが進行し、また次のアクションステージへ、という構成になっています。

ところがこのラスアスは、ストーリーの進行とアクションゲームの部分が重なっているため、『リアルタイムにストーリーを進めていく感覚になれるアクションゲーム』になっています。

そういう構成なので実際にプレイしてみると、敵と戦うアクションゲームや恐怖感満載のホラーゲームとは違い、風のリグレット(古い名作!)などのノベルゲームを遊んでいる感覚や、ドラマでいえば24(トゥウェンティフォー)を見ている感覚に近いものがあります。ジャック・バウワーがアクションして打開していくシーンを、このゲームではプレイヤーが操作しているという感じです。ただ、物語としての全体的なまとめ方はロードムービー的です。ちなみに、「ムービーゲー」ではありません。

ストーリーに関しては、ゲームの話題を共有する都合上どうしても既存の枠にカテゴライズされて「サバイバルホラー」や「サバイバルアクション」などと言われるので、「荒廃した世界で生き残る」といったザックリした印象しか持てませんが、物語の軸は主人公の中年男性ととある少女が家族のような信頼関係を築いていくヒューマンドラマです。これはやってみて驚きました。それだけにクリアした時には全てを理解して感動が押し寄せこのゲームの高評価に繋がっています。

一周目の中級をクリアしただけではアクションの部分が物足りなく感じてストーリーが目立ってしまうためこのゲームを誤解した状態になり、二周目以降サバイバルモードをやるとステルスでの緊張感、計画性、観察力、謎解き、ひらめき、大胆さなどがバランスよく必要になり「おっ、これは、、、ゲームだ」となります。

やり込み要素は、銃器類の強化、主人公の能力強化、特殊な扉の開錠、遺物収集、タグ収集、サバイバルガイド収集、コミック収集、会話収集(恋愛ゲーみたいw)、メダル収集(条件をクリアすると取れる。トロフィーのような物で、それよりも種類が豊富)、トロフィー(プラチナ有り)収集、高難易度サバイバルとサバイバル+の出現があり、一周目だけではコンプリートできない仕様になっています。

映像に関しては、発売前から「PS3の限界に挑戦した」などという制作会社のコメントもあったせいで嫌でも期待が高まりましたが、所詮はゲーム機の映像クオリティでの話ということを念頭において冷静に受け止める必要があります。

普段からよくゲームをしている人からすれば当然そのように受け止めていることですが、あまりゲームに馴染みのない人からすると「大作映画のようなグラフィック」や「漠然と綺麗な映像」を想像してしまいます。キャプチャ画像やトレイラーなんかは綺麗に見えるものですから。販売店で家電を見るような錯覚に近いかも。

肌や服もテッカテカのプラスチックみたいな質感ですし、キャラクターの動きもAmazonのリボルテックダンボーが動いているところを想像してしまうような箱箱しい動きですし、あくびのような顔のアップでは連動する筋肉の動きがないので完全にマネキンホラーです。また最高画質にしてもそもそも階調が乏しいので白飛びや黒つぶれ感が否めません。

そういったPS3の条件の中で、「素晴らしい映像を実現した」ということです。

リトルビッグプラネット同様、このように前評判から盛り上がる超話題作は、普段あまりゲームをしない層も手を出すと思います。そういった方々は、いろいろと誤解のないように購入前に出来るだけ下調べをし、根拠のないプラス期待はしないで判断することをおすすめします。

良い点、悪い点、それぞれありますが、今後PS3ではこのジャンルでこれを越える作品は出ないような気がします。アクションとストーリーの素晴らしい融合の仕方で「遊べる娯楽」の一つの完成形ともいえる素晴らしい作品です。

良い点

雰囲気が良い

全体的にゆったりした音数の少ないBGMで荒涼とした世界観を演出しています。BGMの付け所は非常によく、無音や環境音を上手に使えており、古いアメリカ映画そのものという演出で、全体的にはロードムービー的に仕上げられています。

進めるストーリー

総評でも書いた通り、ストーリーを進めていく=アクションになっているところが非常に素晴らしい作りです。

チェックポイントが細かい

オートセーブでのリスタート地点が細かく設定されているので、死んだ時にかなり近いところから再スタートできるため、ゲーム進行にストレスを感じにくいです。

ただ、悪い点にも書いてある通り、再スタートによる状況の強制変化がある点は改善して欲しいところです。

聞き耳

非常に面白い機能です。単に見えない位置にいる敵の動きを察知できるといえばそれまでですが、グラフィック的、アイディア的に非常にゲームにマッチしていて面白い演出で楽しめます。

敵との間に障害物が無くて視界に入る可能性がある時の効果音が最高

「ブゥーン」っていう効果音が鳴ります。非常に緊張感を高めるいい効果音と鳴らし方です。

大げさにデフォルメしすぎていない効果音が良い

殴る音がとにかく生々しく仕上がっていて臨場感を演出しています。効果音の世界で「生々しく」ということは言い換えれば「地味でユニークさが無い」ということですが、逆にそれが人間の想像力をかきたててより強いリアリティを感じさせます。

おそらく全力でソファーとかスイカとか殴って録音しているはずです。

マルチプレイが手軽で面白い

最大4対4でのチーム対戦がオンラインでできます。シングルでのストーリーをプレイする時とできる事はほぼ同じなので、ストーリーを一周でもクリアすれば即マルチプレイで楽しめます。

極端に細かな仕様がない分、手軽に楽しめるところが良いです。おそらく息の長いマルチプレイになると思います。

ただ単純に対戦するだけではなく、物資を集めて味方の人数を増やしたり、武器や防具の強化、コスチュームの開放、ミッション、トロフィーなどがあります。下手ですぐやられてしまってもそれなりにアイテムなど溜まっていくので楽しめます。

ただ、沢山マルチプレイをしている人が強化されていて有利なので、できればマッチングで自動で分かれるようにして欲しいところです。チームプレイで倒すことは出来ますが、結果をみるとやはりそういう人はキル数がダントツで多くなっています。「上手さ」でその結果になっているなら何とも思いませんが、大抵は至近距離からでも一撃で死なないのを強みにして、突っ込んできて力技の打ち合いで相手を倒しているので、そういうところを見るとちょっと冷めます。

ともあれ手軽に面白い対戦ゲームです。

声優陣が素晴らしい

英語版ではアシュレー・ジョンソンさん演じるエリーの声が素晴らしく、非常に魅力的なキャラクターに仕上がっています。いわゆる日本人ウケする萌え系ではない、躍動感のあるという意味での魅力があります。

日本語版ではやはり山寺宏一さん演じるジョエル役が光っています。芯のある声を出せる声優は貴重な存在になってしまっています。出来ればマーリーン役は粗雑でいかにもアウトローな感じの声ではなく、冬馬由美さんのように毅然さと清潔感を併せ持った演技力のある声をあてた方がマーリーン自身や物語全体に深みが出たような気がします。

どちらかと言えば英語版音声で字幕にしてプレイする方をおすすめします。聞き取りにくい部分もあるので。

[PS3] The Last of Us (ラスト・オブ・アス)
The Last of Us (ラスト・オブ・アス)

悪い点

3D酔いしやすい

FPSなどをやりなれている人なら酔うことはないのかもしれませんが、そうでない人は要注意です。

とにかく酔いやすいゲームです。最初は30分ぐらいで吐き気がしてきてゲームを続けられません。その後も10分おきぐらいには視線を画面から外して休み休みでないとゲームを出来ません。メタルギアシリーズやバイオシリーズでは全く酔わない人でも、これは酔うかもしれません。

それでもがんばってやっていると慣れますw人間て凄い。

つじつま合わせの仕様

一部のシーンで、ストーリーとのつじつまを合わせるためにアクションに制限がかかる場合があります。

また、ビルとエリーと3人で行動する時も、学校内で感染者をわざわざ全滅させないと進めなかったり、エンジンを取りにいく直前のバス停での乱戦では、予め周囲の敵を倒して数を減らそうが減らすまいが関係なく一定数の敵が沸くなど。

死んでリスタートした時の状況の強制変化

死んでリスタートした時、予想外の地点から始まることがあり、「ここどこ!!?」とややパニックになりながら状況を把握しているうちに殺されることもあって萎えます。

死ぬと敵の行動が簡単なパターンに変わる

特にサバイバル+でやっているとはっきり分りますが、最初は敵が二人一組で行動していてそのままではステルスキルできない行動パターンですが、一度死ぬと敵が一人一人バラバラな方向へ動くためがんばればステルスキルできる行動パターンになり、更にもう一度死ぬと敵同士が障害物でお互いが見えない位置に動き出す行動パターン(おそらく中級レベルの行動パターン)になるため簡単にステルスキルできるようになります。

自分でレベルを変更できる機能があるので、余計なお世話な機能です。さすがに興醒めするのでこれは改善して欲しい点です。

味方の動きが雰囲気をぶち壊す

非戦闘状態ではプレイヤーが敵に発見されなければ、味方が敵の視界に入っても戦闘状態になることはありません。平常時では味方NPCはミソ扱いです。これで戦闘状態になってしまう仕様だとかなり面倒臭いゲームになってステルスゲーにはなり得なくなってしまうのは理解できますが、流石にこれは雰囲気をぶち壊されてしまいます。

例えば墓地でステルス行動している時に、巨体をゆらしてドカドカとクリッカーの目の前を走っていくビルを見ると「空気よめ!」と言いたくなります。

ただ、平常時には味方は居ないものとして処理されていますが、プレイヤーとはぶつかるため、味方が邪魔して通れなかったり、味方が邪魔して隠れられずに敵に発見されて殺されることもあってげんなりする時があります。

味方NPCのプログラムがもっと優秀ならいいのでしょうが、現段階ではあっちを立てればこっちが立たずとなってしまい、ゲームの制作上致し方ないところなのでしょうか。

日本語訳のセリフが不自然

全体的には日本語訳はフランク且つ自然でよくできていますが、一部妙に堅苦しい芝居じみた言い回しになることがあって、突然詩の朗読でも始めたかのような空気感になり笑えます。

例えばとある場面で「探し続けよう」なんて言うんですが、会話では言わないです。「まあ、探そうか」とか「探すしかないな」とか「(一呼吸)・・・探そう」などが自然です。

部分的に他の人が訳したんじゃないかと思えるような不自然さです。アフレコ中にその場で誰かしら違和感を持ったはずなので、その時に臨機応変に修正して欲しかったところです。

なお、翻訳版に必ずつきまとう役者の表情や動作と言語の不一致はありますが、表情に乏しい「ゲーム」という媒体が逆に幸いして映画やドラマほどの違和感はありません。

一部の演出が不自然

怪我人のふりをして近づいてくるハンターを車で引こうとするシーン。カーステレオで流していた音楽の音量が上がりBGMへと変化しその中でゴタゴタが起こる演出は非常にズレを感じます。

この演出の手法は、若気の至りを回想するシーンや、破滅へ向かって暴走するシーンなどに効果的で、そういった印象が非常に強いため、単なる旅の途中のワンシーンで突然使われても変に物語に起伏をつけてしまっておかしさだけが残ります。

ここは普通に激しいBGMを流してぶつ切りにする演出が最適だと思います。

また、ジョエルの腹部に鉄筋が刺さるシーンがありますが、刺さっている位置がおへそと盲腸の間ぐらいの位置でほぼ腹部の真ん中といったところです。

出血量からしてもどう見ても出血多量でほぼ即死級の致命傷なんですが、薬も無いのに手縫い縫合だけで生きているところが非常に残念な演出です。

基本的に十分リアリティがある映像なので、大腿四頭筋をえぐる程度の傷でよかったと思います。その方が手に汗握る脱出劇になったはずです。

最後の病院から脱出するシーン

一周目だけかまたは通常難易度では、ルートを間違えて兵士に追いつかれても死なない設定にした方がエンディングへと盛り上がって繋がっていくはずです。二周目またはサバイバルモードの時だけ殺されることもある設定にしておいて欲しいところです。

悲壮感溢れるBGMが鳴って良い雰囲気なのに死んでプツッと切れてやり直し、「はい、もう一回悲壮感な気持ちを作りなさい!」と言われてもかなり無理があります。ここでけっこう冷めてしまいます。そのままエピローグ、エンディングへと繋がっていくので非常に残念な部分です。

MGS PWのQTEで失敗して何度も同じストーリーを読まされる気分と同じです。

規制による映像編集のせいで「?」になる部分がある

これはどうしようもない問題ですが、規制が入っているせいで、登場人物の性格がややつかみづらくなってしまっていたり、会話の流れが不自然になっている部分があります。

本家海外版のプレイ映像を見るとモヤモヤが解消されるので、プレイ済みの方は見てみてください。

・・・それにしてもこれだけ存分に流血しておいて、その規制意味あるのかな?

[PS3] The Last of Us (ラスト・オブ・アス)
The Last of Us (ラスト・オブ・アス)